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第102回 現場発「いつかこの声が」
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熊本市で暮らす大学生の山本栞奈さん(25)は、筋力が低下する難病を患い寝たきりの生活を送っています。5歳から高校卒業まで児童養護施設で育った栞奈さんには、介助してくれる家族はいません。経済的な事情で大学進学を断念し自衛隊に入隊したものの足が重く感じるなど体に異変が現れ、入退院を繰り返した末2年でやめることに。さらに2020年の熊本豪雨で入院中の病院が被災し、病院が機能不全になった結果症状が悪化...。予期しない事態が人生を襲う中、転機が。移転先の障害者支援施設で出会った社会福祉士の女性。自らも車いすの生活をしながらも相手に寄り添い働く姿を見て、同じ仕事を志す決意をします。一念発起して貯金などを使い、社会福祉を学ぶため大学に入学。憧れの1人暮らしも始めました。
おしゃれやおしゃべり、歌うことが大好きで笑顔を絶やさない栞奈さんですが、去年末に病状が悪化。筋力の低下で自力での呼吸が難しくなり、医師からは喉に穴を開け気道を確保する気管切開手術を提案されました。しかし、手術をすれば声を失うことに...。症状がいつ悪化するか分からない中、栞奈さんは"今できること"への挑戦を続けています。講演で生い立ちや思いを伝える。声を失った後も会話ができるよう、自分の声を収録する。そして、離れ離れになった親に会いたいという願い...。「苦しみを分かち合い、誰かの背中を押せる存在になりたい」と語る栞奈さんの、一瞬一瞬を精いっぱい生きる人生を見つめます。